1.映画『ダヴィンチコード』のインパクトとは

 今、ソニー・ピクチャーズ製作『ダヴィンチコード』という映画が世界の注目を浴びています。なお、ソニーの場合は、映画制作ではなく、映画製作が似合う でしょう。この映画のインパクトとは、イエス・キリストが妻帯者であり、子供ももうけて、その子孫が中世貴族になって、今も末裔が南仏の田舎に暮らしてい るというストーリーにあるでしょう。このような説は、キリスト教を根本からゆるがすものです。西欧社会や中南米社会を支えるキリスト教を根本から否定する に等しいかもしれません。筆者はキリスト教信者ではないので、よくわかりませんが、キリスト教信者にとっては大ショックでしょう。すでに、世界中のキリス ト教関係組織から、大抗議が巻き起こっているようです。特に、カトリック教の総本山、バチカンのローマ法王への危険な挑戦のようにみえます。案の定、カト リック教国でソニー製品不買運動も起きていると報道されています。日頃、宗教にあまり関心のない筆者が、この映画に興味をもったのは、この映画が日本企業 ソニーのブランドによってリリースされている点にあります。ソニーはすでに、日本出身のグローバル企業であって、もはや日本企業ではないといえないことも ありません。しかしながら、世界に流通しているソニー製品を通じて、世界の人々が日本、あるいは日本人のブランド・イメージを形成させてきているのは確か でしょう。その意味で、この映画のネガティブ・インパクトはいずれ間接的に、われわれ日本国民に跳ね返ってきます。

 ウェッブ辞典、ウィキペディアによれば、キリスト教信者は21億人(カトリック10億人、プロテスタント5億人、その他諸派6億人)です。世界人口は65億人ですから、その3分 の一がキリスト教信者です。とりわけ、西欧社会、中南米社会はキリスト教国が多いといえます。極論すれば、個人向け消費財メーカーであるソニーは、世界に 分散するキリスト教信者を敵に回すというリスクを冒して、この映画を「ビジネス」として製品化してしまったことになります。西欧社会では、闇の支配者です ら畏れ多くて、破れなかったタブーを日本のソニーがあっさり破ったということです。知らぬが仏とはこのことか。この映画は話題性が高く、大ヒットするかも しれませんが、ソニー製品、ひいては日本製品の不買運動が起きてはどうしようもありません。ソニーの主力事業である、マルチメディア機器は、激烈な競争に 曝されているわけですから、ソニーにとってこの映画のリリースは非常にリスクが高い。世界のキリスト教信者から、ソニーは許せない日本企業、あるいは日本 人は反キリスト的とみなされる危険が大です。ちなみにマスコミ報道によれば、この映画は、ソニー新社長、ハワード・ストリンガー氏(英国人)の発案だそうです。今、日本は、韓国、中国から小泉首相の靖国参拝による挑発で非難され、さらにこの上、西欧各国から、日本は反キリスト国家と非難されることになりそうです。元SRI研究員のピーター・シュワルツが1991年に予言した『日本の孤立シナリオ』が、いよいよ現実化しそうです(注1)

 

2.マルチメディアの洗脳効果は抜群

 映画商業主義の観点からキリスト教にかかわる映画はヒットしやすいのでしょう。なぜなら、ビジネス市場として有望な先進国には、キリスト教信者が多いか らです。十戒やベンハーなど、戦後の映画の洗脳効果は、いうまでもなく抜群でした。ダイナミックなストーリー展開(シナリオ)、映像、音声、音楽、が総力 を挙げて、観客の全知覚に迫ってきますから・・・。すなわち、MOT(技術経営)の 視点から、ソニー・ブランドに代表される高度マルチメディア技術こそが、現在、世界最高の洗脳手段と位置づけられます。歴史的には、絵画、経典、偶像、建 築物、音楽、説教などが、洗脳手段でしたが、インパクト、あるいはダイナミズムの点で、高度マルチメディア技術に遠く及びません。世界統一を企む、闇の支 配者が軍事、金融、エネルギー事業に次いで、こぞってマルチメディア事業に関心をもつのは当然です。

 さてキリスト映画で最近、話題となったのは、メル・ギブソンの制作した『パッション』でしょう。イエス・キリストの処刑をリアルに描いたこの映画は、キ リスト教の伝統的信者を感涙させるのでしょう。その反面、イエス・キリストをここまで、迫害し苦しめた弾圧権力への憎しみを倍増させる効果があります。一 方『ダヴィンチコード』は、そのような敬虔なるキリスト教信者に冷水を浴びせているように受け取れます。その意味でこの映画は、極めて挑戦的です。これま で、世界を主導してきた平和志向のキリスト教的価値観への深刻な挑戦だからです。

 

3.米国の伝統的良心は侵害されている

ところでスタンフォード大学の中庭(クワッド)の教会(カテドラル)の壁には、希望(Hope)、愛(Love)、誠(Faith)、慈悲(Charity)という4つの言葉が刻まれています(注2)。キリスト教信者ではない筆者でも、クワッドの中に立って、この壁をみつめると感動します。シリコンバレー発イノベーションの原点ここにあり、とすら筆者は思っています。なお、スタンフォード大学の建造物は南欧風のデザインですから、カトリック系に見えます。

 シリコンバレーは、周知のように、20003月、 ネットバブル崩壊に見舞われましたが、筆者は、これは、ジョーン・バエズの主導したベトナム反戦運動のメッカであった、スタンフォード大学を支える反戦的 精神への攻撃であったと捉えています。シリコンバレーで生まれた平和的技術体系であるインターネット技術は、本来、国防総省の知的資産ですが、国防総省軍 人出身の政治家コーリン・パウエルに代表されるように、国防総省の官僚は決して好戦的ではなく、戦争の悲惨さを熟知しているだけに、実に反戦的です。現に ペンタゴンはアーリントン墓地と隣接して立地されています。米国人戦没者の御霊を心底、弔っているのは、政治家ではなくペンタゴンの軍人です。他方、小泉 首相の靖国参拝がなんと安っぽく見えることよ。そしてペンタゴン軍人は反戦政治家ケネディを尊敬してきたのです。その意味で、軍事経験のない、ドナルド・ ラムズフェルド現、国防長官の方が、外様の亜流なのです。つまり、ブッシュ・ジュニア政権となって、国防総省が、非軍人の別人脈に乗っ取られているという 見方が成り立ちます。だからこそ、国防総省内で、ラムズフェルド罷免運動が水面下で拡がっているのです。元国防総省軍人、スタンフォード大元教授のジム・ クラークに代表されるシリコンバレーの人脈は、ユタ大学・国防総省人脈といわれるように、実は、伝統的国防総省人脈なのです。この人たちは、アンチ・マイ クロソフトでもあります。ちなみに、インターネットの前身、国防総省のアーパネットはスタンフォード大学付属研究所(現在のSRIインターナショナル:筆者の出身シンクタンク)とユタ大学などで、1969年、世界最初に実験されています(注3)

 さて西欧人は、われわれ日本人より、一般的に、攻撃的で強欲的な本能が強いと、筆者の16年半におよぶSRIでの経験知で感じています。だからこそ、それを抑制する意志も強く、平和志向のキリスト教が絶対に必要なのだろうと思います。一方、世界経済を支配する闇の寡頭勢力は、それこそ強欲の塊です。だからこそ、これまで、闇の存在であることに我慢してきた。ところが、2001年の9.11事件を境に、悪貨が良貨を駆逐するかのように、米国覇権主義は180度 変わりました。いかなる手段を弄しても競争に勝つこと、勝つためには戦争をいとわない、他人をだましてでもお金もうけこそが絶対的価値である、という好戦 的、拝金的価値観が跋扈しています。企業活動とは利益を上げることであると、当然のごとくいわれます。企業活動は、社会に貢献することであり、結果的にい くばくかの利益をとらせていただくなどという、松下幸之助の実践した東洋的な経営哲学が偽善的に聞こえる世の中となってしまいました。

 19631122日、カトリック系アイルランド移民の家系、ケネディ大統領が暗殺されて以来、闇の勢力(反キリスト勢力)が権力を握り始め、2001911日、9.11事件という人工的ミニ・アルマゲドンが起こされて以来、2000年間、キリスト教勢力によって闇に閉じ込められてきた反キリスト教的勢力(寡頭勢力)が、いよいよ表に出てきた。ある意味で歯止めがなくなっています。

 

4.ビルとスティーブに翻弄されるソニー

さて、ここで日本を振り返ってみると、9.11勃発直前、20014月に誕生した小泉政権を通じて、日本も闇の勢力に徐々に支配され始めたと考えられます。現在の日本は、欧米金融資本家に翻弄された幕末時代と実によく似ています。

今回の『ダヴィンチコード』の一件で、ソニーも彼らに翻弄されているようにみえます。

 ところでシリコンバレーのヒーロー、スティーブ・ジョブズが、ウォルト・ディズニーの筆頭株主となっています。ディズニーは、9.11事件発生直前、20015月、 突然、日本人に屈辱的な映画『パールハーバー』(およそディズニーらしくない戦争ロマン映画)をリリースしました。この映画は『アルマゲドン』と同じ制作 スタッフによる作品です。当時、筆者はなぜ『パールハーバー』が唐突に、制作されたのか不思議でした。タイミングよい『パールハーバー』のリリースで、米 国国民の脳裏には、9.11事件発生時、1941128日、日本帝國海軍によるパールハーバー奇襲の悪夢を連想させられたのです。またディズニーが、マイケル・ムーアのアンチ・ブッシュ映画『華氏911』の配給を拒否したことも記憶に新しい。ついでに言うと、クリント・イーストウッドが最近、なぜ、映画『硫黄島』を企画したのか、不思議です。国防総省ペンタゴンの脇に、日本人にとって屈辱的な硫黄島戦勝記念公園(SRIワシントン事務所の近所)があります。9.11事件で、ボーイング757が、ペンタゴンに衝突する前に、なぜ、手前の硫黄島戦勝記念公園の屈辱的な銅像をなぎ倒さなかったのか、こちらも実に不思議ですが・・・。

 さて、ビル・ゲイツ率いるマイクロソフトが、ウィンドウズXPの次世代バージョンを、アルタビスタと命名したのは、ディズニー・ブランドを強く意識しています。そこでアンチ・マイクロソフトの若手旗手、スティーブ・ジョブズ(アップルコンピュータ創業者)が先手を取って、ディズニーの筆頭株主に躍り出ているのは実に興味深い。

 アップルのiPodは、本来、ソニーが手がけるべきビジネスモデルであったのに、スティーブ・ジョブズに先手をとられた。一方、ディズニーをスティーブ(米国の良心のシンボル)に獲られそうになっている闇の勢力は、ソニーにMGM(注4)という人参をぶらさげて、ソニーを見事に取り込んだ(インナーサークル化)と解釈できないこともありません。

 

注1:テックベンチャーNo.98『日本人孤立のシナリオ』20022月5日

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/ATT00033.htm

注2:山本尚利[1999]『スーパーベンチャー戦略』同友館:p196

注3:SRIインターナショナル・ホームページ

http://www.sri.com/about/timeline/arpanet.html

注4:ベンチャー革命No.119MGM買収:ソニーの危険な賭け』2004925

http://www.geocities.co.jp/SiliconValley-Oakland/1386/mvr119.htm